コラム

カンボジア安全運転教育の現場から

カンボジア

こんにちは、ミナミカンボジアで教習業務を担当している水野です。今回は、私の仕事とカンボジアの交通事情についてお話ししたいと思います。

私はもともと自動車整備士として社会人生活をスタートし、地元の静岡で教習指導員を5年半経験しました。その後、航空業界に転職し福岡への転勤を経て退職。その後南福岡自動車学校に入社し、教習指導員として10年以上にわたって二輪や大型トラックの教習、検定、新任指導員教育などを行いながら、安全なドライバーの育成に努めてきました。

私の仕事は常に「乗り物」と「安全」に関わるものであり、まさかこの経験を海外で活かすことになるとは思ってもみませんでした。カンボジアに来てから、その交通事情を目の当たりにし、改めて安全運転教育の重要性を実感しています。

カンボジアの交通事情

カンボジアの交通事情と聞いて、多くの方が「無法地帯」のようなイメージを持つかもしれません。でも、実際にはカンボジアにも道路交通法が存在します。驚くべきことに、その法は日本の道路交通法を参考に作られているんです。

とはいえ、カンボジアではその道路交通法が十分に理解されていないのが現状です。例えば、カンボジア人の移動手段と言えばバイク。125cc以下のバイクは免許が不要で、15歳から乗ることができます。つまり、交通ルールを学ばないままバイクに乗る人が多いというわけです。

また、自動車の免許を取得する場合、多くの人は自動車学校に通ってから試験を受けますが、カンボジアのローカル自動車学校では学科の授業はほとんどなく、実技も試験課題中心。車庫入れや縦列駐車など、試験で必要な操作だけを教えることが多いのが現状です。そのため、安全確認や法規走行が指導されないまま免許が交付されることが多いのです。

交差点の混乱とその裏にある秩序

このような状況ですから、交差点ではしばしば混雑が発生し、身動きが取れなくなることもあります。しかし、よく観察してみると、カンボジアのドライバーたちはお互いに上手に譲り合い、絶妙な間合いで通過していきます。一見、無秩序に見えるかもしれませんが、実は無理せず相手の動きを読み取って譲るという文化が根付いているんです。

カンボジアの人々は基本的に穏やかで優しい性格です。ですので、交通ルール以外の方法でも、自然に秩序を作り出しているのだと感じます。

教育の必要性と私たちの取り組み

カンボジアではほとんどの人が早い段階からバイクを運転するため、交通社会において日本人よりも早くから経験を積んでいると言えます。さらに、譲り合う気持ちを持っている点も特徴的です。しかし、交通ルールやその重要性をしっかりと理解し、守る意識を根付かせることが今後の課題だと感じています。

私たちは日系自動車学校として、カンボジアの免許取得を目指す方々に対して、他の自動車学校とは異なるカリキュラムを提供しています。安全運転に必要な技術や、同乗者の安全確保、死角の特性や安全確認の方法など、実践的な教育を行っています。

また、日本でドライバーを目指すカンボジアの方々に対しては、日本の道路交通法の解説や安全運転技術向上のための練習を行い、カンボジアとは異なる交通文化や優先関係も教えています。

カンボジアの方々が日本で安全なドライバーとして活躍できるように、また受け入れ企業様にも安心していただけるように、私たちは質の高い教習にこだわり続けます。将来的には、日本の安全運転のスタイルが世界中で標準となることを目指して、私たちはこれからも努力を続けていきます。

首都プノンペンでの路上教習の風景

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