コラム

カンボジアに日本基準の教習環境をつくる理由

安全教育について

カンボジアに整備した教習コースの空撮

連載|来日前から始まる、外国人ドライバー育成のしくみ 第2回

外国人ドライバーの受入れを考えるとき、「来日前に、どこで、どのような教育を受けてくるのか」は、気になる点の一つではないでしょうか。

前回は、安全教育を「来日前」から始める理由をお伝えしました。今回は、その教育をカンボジアで行っている理由と、現地に整えてきた「日本基準の教習環境」をご紹介します。

カンボジアで来日前の教育を行う理由

外国人ドライバー支援機構(FDSO)は、自動車学校を母体とするミナミホールディングスグループの一員です。グループ会社のミナミカンボジア(MINAMI CAMBODIA CO., Ltd)は、2017年にカンボジアで自動車学校を設立しました。

ミナミカンボジアでは、日本の教習所で培ったノウハウをもとに、安全なドライバーの育成に取り組んできました。卒業生は、日系企業向けのハイヤー事業の運転手などとして現地で働いています。

こうして積み重ねてきた、日本式の運転をカンボジアの人に教える指導のノウハウと、安全に働くドライバーを育ててきた経験を活かし、特定技能「自動車運送業」分野の開始を見据えて、来日前教育の準備を進めてきました。

教育の一部として、教習コースを整備した理由

カンボジアでは、日本のように教習所のコースで段階を踏んでから路上に出るのではなく、路上で運転を覚え始めるケースが多くあります。日本の運転を来日前に学ぶなら、日本と同じ手順で練習できる場所が必要です。

そこで、2025年12月、ミナミカンボジアの自動車学校に、日本の教習所のコースを再現した教習コースを整備しました。

日本では、指定自動車教習所が備えるべきコースの種類と、その形状・構造の基準が定められています(道路交通法施行規則 第32条・別表第三)。坂道コース、S字にあたる曲線コース、クランクにあたる屈折コース、方向変換コースなどを備えること、そして、それぞれの幅や坂道のこう配などの基準です。

このコースは、そうした基準を満たすように整備しており、見通しの悪い交差点や縦列駐車、鋭角コース、「止まれ」「徐行」などの日本の道路標識や信号機も設け、実践的な課題練習に対応できる環境を整えています。

コースがあることで、何が変わるのか

海外の路上だけで運転を覚えてきたドライバーたちにとって、日本式の細かな安全確認や正確な車両感覚を身につけることは容易ではありません。カンボジア現地の路上では歩道が整備されていない場所が多く、どこからが人の敷地なのかの境界も曖昧です。さらに、交差点では予測しづらいタイミングや角度でバイクが飛び出してくるため、「そこまで見なければ事故になる」という極限状態で、ただ目の前の状況をこなすのが精一杯でした。

現地で指導にあたる日本人教習指導員は、コース開設前をこう振り返ります。

「以前の路上練習では、あっちもこっちも見てバタバタしながら走るだけで終わっていました。でも、専用コースができたことで状況が全く変わりました。基本の『寄せる』運転や、日本の1段階で学ぶような基礎的な反復練習を、車もバイクも来ない安全な環境でしっかりと行えます。何より、止まって口頭で時間をとり、本人が理解できるまで納得いくまで練習できるようになったのが大きいですね」

交通量に怯えながらその場しのぎで走るのではなく、コースという安全な空間で「なぜそうするのか」を理解しながら基本操作を反復できる――。この環境の有無が、日本式の安全意識を根づかせる上で大きな分かれ道となっています。

また、日本の指定自動車教習所では、技能教習を「基本操作及び基本走行」と「応用走行」に分け、段階を踏んで進めます(道路交通法施行規則 第33条・別表第四。応用走行は原則として道路で行う:同条第5項第1号レ)。まずコースの中で、発進や停止、曲がり方、坂道での操作といった基本を身につけ、そのあとで路上を走ります。

この順番で学ぶことは、運転を一つひとつの操作と確認に分けて身につけ直す機会になります。交通量のないコースだからこそ、標識を見て速度を落とす、一時停止して左右を確認するといった行動を、落ち着いて何度も繰り返せます。

来日後の教習や試験の前に、日本と同じ形のコースと同じ手順を経験しておくことで、日本での免許取得と、その後の企業内研修に落ち着いて臨めるようにしています。

受入れ企業にとっての意味

このコースは、試験に合格するためだけに作ったものではありません。目的は、来日後に日本の道路で安全に運転を続けるための土台をつくることです。受入れ企業にとっては、基礎的な教育を現場だけで抱え込まずにすみ、企業内研修では自社の車両や業務に合わせた指導に時間を使いやすくなると考えています。

実際に、2026年10月時点で、ミナミカンボジアで教育を受けて来日した10人は、全員が入国から2週間以内に、外国免許切替(普通免許)の知識確認と技能確認に合格しています。2025年10月の外国免許切替の見直し(知識確認の問題数が50問になるなど)の後に受けた人も含みます。

連載ラインナップ(順次公開予定)

本連載では、来日前から始まる、外国人ドライバー育成のしくみを、全6回にわたって公開予定です。

回テーマ
第1回なぜ安全教育を「来日前」から始めるのか
第2回カンボジアに日本基準の教習環境をつくる理由(今回)
第3回日本の運転をどう教える?現地に常駐する日本人教習指導員に聞く
第4回AI教習システムで運転をどう評価するのか
第5回外国人ドライバー本人に聞く「日本の運転で難しかったこと」
第6回免許取得から現場配属まで、企業が準備すべきこと

次回予告

次回は、カンボジアに駐在する日本人教習指導員に話を聞きます。日本の運転をどのように教えているのか、コースでの教習が始まってから現場で何が変わったのかも含めて、指導する側の実感をお届けします。第3回は11月4日(水)に公開予定です。

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日時:2026年11月12日(木)14:00〜16:00
会場:南福岡自動車学校(福岡県大野城市)

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